マリー取引について

さて、先日、外国為替証拠金取引(略:FX)サービスを提供しているFX会社の全てがマリー取引をしているわけではない、と書きました。

出典:日銀レビュー2016年6月(黄色部分は筆者が追加)

 

FX業界では、このマリーしているかどうかのビジネスモデルについて、(特に英語圏では)以下のような呼び方をしています。

  • A Book業者:顧客注文をマリーしない
  • B Book業者:顧客注文をマリーする
  • ハイブリッド業者:一部の顧客注文をマリーする

ここでいうA Book業者は、Agency(取次ぎ)モデルとも呼ばれており、基本的に自社ではポジションを取りません。顧客から受けた注文をマリー(相殺)せずに、そのままカバー取引先の金融機関に投げます。もちろん、通貨ペアによってはカバー先が小さい単位を受けない時もありますので、そのような時は一時的にカバー取引先が受け入れる最低単位までは自社でポジションをプールする必要があるかもしれません。いずれにせよ、長期に亘って大きなポジションを持つことはありませんし、自社内でディーリング行為をするわけではないので、この手の業者のマーケットリスクは限りなくゼロに近くなります。

では、A Book業者の収益はどこから発生するのでしょうか?基本的には手数料です。外付け手数料の場合もあれば、スプレッドに包含されていて投資家には直接的には見えない場合もあります。

いわゆるDMA(Direct Market Access)、ECN(Electronic Communication Network)、NDD(Non-Dealing Desk)を採用している業者がA Book業者と言えます。ですので、もし貴方が使っている業者がDMAをうたいながら「手数料ゼロ!」などと言っていたら、確実にプライス(スプレッド)に手を加えていると考えてください。業者は何かしらの方法で収益を上げないといけないのですから、カバー先にダイレクトに注文をつなぎながら、手数料を取らないなんて有り得ないわけです。もしくは、カバー先からのキックバックという形で収益を上げているのかもしれませんが、その場合はカバー先から提示されているスプレッド自体にコストが上乗せされているわけです。下手な広告文句に騙されないようにしましょう。

ちなみに、他社や親会社等の取引システムを採用し、カバー先として利用するホワイトラベルモデルも基本的にはA Book業者と言えます。

 

ではB Book業者のビジネスモデルはどうなっているのでしょうか?B Book業者は、顧客の売り注文と買い注文を先ず自社内で約定させます。つまり、顧客が売りの注文を出したら、基本的に同額の買いのポジションを自社内で立てるわけです。そして、何かしらのアルゴリズムを使ってタイミングよく、自社内で積みあがってゆく売りと買いのポジションをマリー(相殺)させてゆくことにより利益を上げるわけです。

B Book業者の特徴としては、カバー先のプライスに左右されずに安定して固定スプレッドを提供できることです。また、顧客の注文を約定して、そのまま自社のポジションにすることから、顧客とは利益相反関係にあります。ですので、顧客が儲かれば業者が損し、顧客が損すれば業者が儲かる仕組みなわけです。一般的に大多数の投資家はFX取引で損していると言われています。実際、統計によると2015年の顧客損益はマイナス2,245億円だったそうです。ということは、全てがB Book業者で発生したロスではないとしても、結構な金額がB Book業者の収益として計上されたことが分かります。そのため、B Book業者はスプレッド収益を度外視したビジネスモデル、固定&狭いスプレッドでもビジネスが成り立っているのです。

 

A Book業者の特徴
  • 外付け手数料
  • 変動スプレッド
  • 比較的早い速度でプライス/スプレッドが変動
B Book業者の特徴
  • 外付け手数料なし
  • 固定スプレッド
  • 顧客と利益相反関係

 

 

実は日本には世界各国に比べてB Book業者が非常に多い国です。日本の取引高トップ10に入る業者の殆どはB Book業者、もしくはB BookとA Bookのビジネスモデルを混在させたハイブリッド業者だと考えられます。

ただ、グローバルの流れとしては、

  • マーケットリスクを抑えるため(運営コストの抑制)
  • 顧客との利益相反関係を避けるため(投資家保護の向上)

多くのFX業者がB Book的なビジネスモデルからA Book的なビジネスモデルに移行しています。

ではなぜ未だに日本にはB Book業者が多いのでしょうか?

それは主に、日本の投資家たちの期待値によるところが大きいと思います。投資家が固定スプレッドや、インターバンク取引でも有り得ないような狭小スプレッドを当たり前のサービスだと考えている限り、B Book業者は減りません。残念ながら、現状、日本だけが世界の流れに後れを取っているわけです。

ただ、このブログの主題の一つでもある「グローバル外為行動規範」が、日本における特異な環境を変えるカギとなると私は考えています。

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