金先業協会アンケート結果①

FX業界の自主規制団体である一般社団法人金融先物取引業協会(金先業協会)は、東京外国為替市場委員会との協力して、毎年FX業者を対象としたアンケート実態調査を実施し、集計結果を公表しています。

結構興味深いのが、毎年同じ設問でもアンケート結果がちょっとずつ変わっているんです。なので、回答している各業者の担当者さんたちも質問の意味を100%把握せずに答えているんじゃないかと邪推してしまうのですが、あくまでアンケートですから、この辺は許容範囲なんでしょうね。

 

では、現時点で最新版である平成28年8月31日に公表された集計結果を検証してみましょう。対象会社数は51社、回答総数は65(複数のビジネスモデルを有する業者があるため)でした。

まず、アンケートの主要目的ですが、FX業者のビジネスモデルを把握することと思われます。本アンケートでは、各業者のビジネスモデルを以下の4つの要素に分け、合計24の形態に分類しています。

  1. ホワイトラベル
  2. 価格の生成に利用するカバー先取引先数
  3. マリー
  4. 顧客約定とカバー取引のタイミング

上記4番目の要素(顧客約定とカバー取引のタイミング)は、ちょっと説明がややこしくなるので、本稿では1~3について結果を見てみましょう。

先日から拝借している日銀レビュー2016年6月の図を使って表すと、下記のようになります。

  1. ホワイトラベル
    • 採用している「取引システム」の種類について、ホワイトラベルに該当するかしないか、という設問で尋ねています
    • 内製(つまり自社で開発している)システム、およびASP(Application Service Provider)を利用した場合は、「該当しない」に入るようです
  2. カバー先取引先数(単数、複数)
    • ここでは、価格の生成に際して利用するカバーレートの発信元であるカバー先取引数を訪ねています。実際にカバー取引を行うカバー取引先ではありません
    • 特定のカバー取引先1社のレートを基に取引価格を生成する場合を「単数」、価格制性の都度複数のカバー先レートから選択あるいは同棲した値を用いる際は「複数」という回答になります
  3. マリー取引の有無(あり、なし)
    • 顧客との取引全量に対して原則すべてカバー取引を行っている場合は「なし」、他の顧客との取引を利用してポジション(マーケットリスク)を相殺する場合は「あり」という回答になります

結果はどうだったでしょうか?下記表をご覧ください。

これを見ると、6割以上の業者がホワイトラベルではない「内製システム/ASP」システムを利用していることが分かります。私がこの業界に入った10年ほど前は、殆どの業者がホワイトラベルのシステムを採用していたことを考えると、だいぶ状況が変わりました。

ホワイトラベルの場合、既定の取引高基準を超えている限り月次システム利用料が掛からない場合が多いため、業者のビジネス立ち上げ時には人気がありました。ただ、収益元がスプレッド収益等のプロフィットシェアリングに限られるということもあり、現在生き残っている業者は収益源の多角化(ディーリング収益)による増収を目指し、自社でシステムを内製するか、システムの柔軟性がより高いASPに移行しているケースが殆どです。

なお、ホワイトラベルというビジネスモデルを採用した場合、基本的には全ての顧客注文をホワイトラベル提供元にダイレクトに投げますので、自社内で「マリー取引をする」という概念は無いはずです。ホワイトラベル提供元、つまりカバー先内でマリーしていることも考えられますが、今回のアンケートの趣旨とは異なりますので、上の表で赤字で示した3社(サービス)は、ちょっと勘違いしている可能性が高いです。

次回、アンケート結果をさらに掘り下げます。

取引システムの種類

さて、みなさんは外国為替証拠金取引(略:FX)業者が採用している取引システムについて、どれくらいご存知でしょうか?

私の理解では、FX業者が採用している取引システムには大きく分けて3種類存在します。

  1. 内製(自社)システム
  2. ASP(Application Services Provider)提供システム
  3. ホワイトラベルシステム

一般的に言って、コスト的にもこの並び順(1が一番高くて、3が一番安価)です。なので、10数年前のFX黎明期には、殆どの業者が運営コストを抑えるために3のホワイトラベルシステム(提供元が外資系の場合が多い)を採用していましたが、ここ数年になり1や2のシステムを採用する業者も増えてきました。

 

では、それぞれのシステムについて簡単に調べてみましょう。

  1. 内製(自社)システム
    • 自社内で開発、運用している取引システムを指す。その際、外部の開発会社を利用した場合であっても、業者が主体性をもって開発し、取引システムのライセンスを保持する場合は内製システムとする
    • 開発コスト、運用コスト共に一番高価な取引システムであるが、自社内で全ての完結できるため、柔軟かつ機動性の高いシステム開発が可能。大手FX業者が採用しているケースが多い
  2. ASP(Application Services Provider)提供システム
    • 複数のFX業者を顧客として持つASPの取引システム。有名なところでは、シンプレクス社IIJ社がある。大抵の場合、FX業者はASPに対してシステム導入時の初期費用に加え、月次のシステム(ライセンス)使用料を支払う。システム使用料の計算方法は会社によって異なるが、取引高に連動することが多い
    • 一つの基幹システムを複数のFX会社に使わせることによって、内製システムに比べ(主に初期開発)コストを抑えることができる
    • 多少のカスタマイズは可能なものの、1社の一存でシステムを大幅に変更することができないので、内製システムに比べるとシステムの柔軟性に欠ける。また、ASPはIT(システム)会社なので、案件毎(カスタマイズ、カバー先の追加、など)に追加開発費用が発生し、状況によっては運用コストが割高になる可能性がある
  3. ホワイトラベルシステム
    • 複数のFX業者を顧客として持つホワイトラベルシステム提供会社の取引システム。ホワイトラベルシステム提供会社自身が金融機関なので、取引システムだけでなく、取引の約定や清算までを網羅するワンストップサービスを提供する形態である。外資系の提供会社が多く、サクソバンク(デンマーク)やカリネックス(米国)が有名
    • FX業者からホワイトラベルシステム提供会社への支払いは「システム使用料」ではなく、金融サービス利用料として、末端の顧客に起因するスプレッド収益やスワップポイント収益を2社間でシェアする形態が多い。見込まれる取引量によっては、初期費用が発生しないこともある
    • システムの柔軟性は低く、画面上の表面的なデザイン以外はカスタマイズも殆どできない

 

グローバル外為行動規範という側面から考えると、「電子取引プラットフォーム」も適用対象者に入っていますので、今後ASPやホワイトラベルシステム提供会社がどのような対応を取ってくるのか、遵守を表明するのか興味深く見守ってゆきたいと思います。

ちなみにですが、ホワイトラベルサービスを提供しているサクソバンクですが、こちらは現時点ですでにコードへの遵守表明を出しているようです。詳細はこちら(英語サイト)からどうぞ。

 

マリー取引について

さて、先日、外国為替証拠金取引(略:FX)サービスを提供しているFX会社の全てがマリー取引をしているわけではない、と書きました。

出典:日銀レビュー2016年6月(黄色部分は筆者が追加)

 

FX業界では、このマリーしているかどうかのビジネスモデルについて、(特に英語圏では)以下のような呼び方をしています。

  • A Book業者:顧客注文をマリーしない
  • B Book業者:顧客注文をマリーする
  • ハイブリッド業者:一部の顧客注文をマリーする

ここでいうA Book業者は、Agency(取次ぎ)モデルとも呼ばれており、基本的に自社ではポジションを取りません。顧客から受けた注文をマリー(相殺)せずに、そのままカバー取引先の金融機関に投げます。もちろん、通貨ペアによってはカバー先が小さい単位を受けない時もありますので、そのような時は一時的にカバー取引先が受け入れる最低単位までは自社でポジションをプールする必要があるかもしれません。いずれにせよ、長期に亘って大きなポジションを持つことはありませんし、自社内でディーリング行為をするわけではないので、この手の業者のマーケットリスクは限りなくゼロに近くなります。

では、A Book業者の収益はどこから発生するのでしょうか?基本的には手数料です。外付け手数料の場合もあれば、スプレッドに包含されていて投資家には直接的には見えない場合もあります。

いわゆるDMA(Direct Market Access)、ECN(Electronic Communication Network)、NDD(Non-Dealing Desk)を採用している業者がA Book業者と言えます。ですので、もし貴方が使っている業者がDMAをうたいながら「手数料ゼロ!」などと言っていたら、確実にプライス(スプレッド)に手を加えていると考えてください。業者は何かしらの方法で収益を上げないといけないのですから、カバー先にダイレクトに注文をつなぎながら、手数料を取らないなんて有り得ないわけです。もしくは、カバー先からのキックバックという形で収益を上げているのかもしれませんが、その場合はカバー先から提示されているスプレッド自体にコストが上乗せされているわけです。下手な広告文句に騙されないようにしましょう。

ちなみに、他社や親会社等の取引システムを採用し、カバー先として利用するホワイトラベルモデルも基本的にはA Book業者と言えます。

 

ではB Book業者のビジネスモデルはどうなっているのでしょうか?B Book業者は、顧客の売り注文と買い注文を先ず自社内で約定させます。つまり、顧客が売りの注文を出したら、基本的に同額の買いのポジションを自社内で立てるわけです。そして、何かしらのアルゴリズムを使ってタイミングよく、自社内で積みあがってゆく売りと買いのポジションをマリー(相殺)させてゆくことにより利益を上げるわけです。

B Book業者の特徴としては、カバー先のプライスに左右されずに安定して固定スプレッドを提供できることです。また、顧客の注文を約定して、そのまま自社のポジションにすることから、顧客とは利益相反関係にあります。ですので、顧客が儲かれば業者が損し、顧客が損すれば業者が儲かる仕組みなわけです。一般的に大多数の投資家はFX取引で損していると言われています。実際、統計によると2015年の顧客損益はマイナス2,245億円だったそうです。ということは、全てがB Book業者で発生したロスではないとしても、結構な金額がB Book業者の収益として計上されたことが分かります。そのため、B Book業者はスプレッド収益を度外視したビジネスモデル、固定&狭いスプレッドでもビジネスが成り立っているのです。

 

A Book業者の特徴
  • 外付け手数料
  • 変動スプレッド
  • 比較的早い速度でプライス/スプレッドが変動
B Book業者の特徴
  • 外付け手数料なし
  • 固定スプレッド
  • 顧客と利益相反関係

 

 

実は日本には世界各国に比べてB Book業者が非常に多い国です。日本の取引高トップ10に入る業者の殆どはB Book業者、もしくはB BookとA Bookのビジネスモデルを混在させたハイブリッド業者だと考えられます。

ただ、グローバルの流れとしては、

  • マーケットリスクを抑えるため(運営コストの抑制)
  • 顧客との利益相反関係を避けるため(投資家保護の向上)

多くのFX業者がB Book的なビジネスモデルからA Book的なビジネスモデルに移行しています。

ではなぜ未だに日本にはB Book業者が多いのでしょうか?

それは主に、日本の投資家たちの期待値によるところが大きいと思います。投資家が固定スプレッドや、インターバンク取引でも有り得ないような狭小スプレッドを当たり前のサービスだと考えている限り、B Book業者は減りません。残念ながら、現状、日本だけが世界の流れに後れを取っているわけです。

ただ、このブログの主題の一つでもある「グローバル外為行動規範」が、日本における特異な環境を変えるカギとなると私は考えています。

FX業界を取り巻く規制

さて、みなさんは外国為替証拠金取引(略:FX)というと、どういう印象を持っているでしょうか?

残念ながら、新聞には上のような見出しがしょっちゅう踊っているため、金融商品としてのFXの地位は低いままです。また、最近ではだいぶ減ってきましたが、海外の未登録業者にまつわるトラブルも後を絶ちません。

こんな悪評を消すため、と思ったかどうかは知りませんが、監督庁は過去10年にわたって様々な法規制を整えてきました。

出典:証券アナリストジャーナル 2016年4月

 

御覧の通り、結構な数の規制が比較的短期間に施行されました。

もちろん、これら規制のお蔭でお行儀の悪い業者が減り、個人投資家の資産が保護される結果になった訳ですが、次から次へと施行される規制の対応に、業者側は常にてんてこ舞いでした。システムの対応、プロセスの変更、ビジネスモデルの見直しなど、常に対応に追われていたのを私もよく覚えています。

 

主だった規制には以下のものがあります。

取引業者登録義務(2005年5月)

この時から個人向けにFXサービスを提供する業者は、監督庁に登録の義務が課せられました。具体的には第一種金融商品取引業をおこなう旨を登録する必要があります。海外業者は基本的には全て無登録業者です。これらについては、金融庁がリスト化し、HP上で定期的に情報を更新しています。

不招請勧誘禁止(2007年9月)

勧誘の要請をしていない見込み客への訪問、電話等での勧誘をする行為が禁止されました。もともとは商品先物業者の無理な勧誘を取り締まるため施行されたものですが、FXなどの店頭デリバティブに対しても同様の措置が取られました。これは、当時のFX業者の殆どが商品先物業者から派生していたことが理由と考えられます。

証拠金の信託会社等への金銭信託一本化(2010年2月)

顧客の預かり証拠金について2005年5月以降、自己の勘定(口座)と分けることが必須となりましたが、2010年2月以降は全ての預かり証拠金を信託銀行等に信託することが必要になりました。

レバレッジ規制(2010年8月、2011年8月)

射幸心を煽る過剰な投機行為を規制するため、レバレッジが先ず2010年8月に最大50倍まで、そして2011年8月には最大25倍まで下げられました。ただし、本規制の施行対象は個人投資家に限られるため、高レバレッジでの取引を望む一部の投資家は、法人を設立して規制対象外の法人口座にて取引し始めるという現象も発生しました。これら法人口座に関しては、2017年5月から別のレバレッジ規制が施行されています。

 

ここ数年に関していうと、新たな規制が導入されていません。その代わり監督庁が注力を入れているのは、いわゆる「フィデューシャリー・デューティー」で、金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を2017年3月30日に公表しています。

この「フィデューシャリー・デューティー」ですが、実はグローバル外為行動規範にも通じるものがありますので、また別の機会に掘り下げて検証したいと思います。

FXの仕組みの基本

さて、ここまで何回かにわたってグローバル外為行動規範について書いてきましたが、ここで本サイトのもう一つの主役である外国為替証拠金取引(略:FX)についても考えてみましょう。

そもそもFXとは何なのか?このブログを読んでいる方は皆さんご存知かとは思いますが、2016年6月号の日銀レビューには以下のように定義されていましたので紹介いたします。

FX取引とは、顧客が取引金額の一部を証拠金として予めFX会社に預託し、成立した取引の決済を任意の期日まで延期することができる外国通貨の売買取引(※金融商品取引法にて定義された通貨関連デリバティブ取引)である。

日本においてFXは、1998年の外国為替管理法改正の外国為替取引自由化をきっかけに登場し、その後20年ほどの期間で急激に一般投資家に浸透しました。現在では個人投資家による外国為替取引市場として世界最大級の規模にまで成長しています。また、現在日本にはFX取引市場が2つ存在します。

  • 取引所取引(東京金融取引所、商品名「くりっく365」)
  • 店頭(OTC)取引

ただ、取引高を比較してみると、全FX取引高の99%以上がOTC取引となっているので、本ブログでは特に断らない限り、OTC取引について述べるものとしますので、ご了承ください。

 

では、FX取引の仕組みについて考えてみましょう。

個人投資家の立場からすると、FX業者がどのような仕組みでサービスを提供しているかについて考えたことは殆ど無いかもしれません。ただ、これからは(特にグローバル外為行動規範の観点から)FX業者選びの重要なポイントになるかと思いますので、ここで簡単におさらいしておきましょう。

出典:日銀レビュー2016年6月

主な登場人物(組織)とその役割は以下の通りです。

  • 顧客
    • 投資家の皆さんです。基本的には個人投資家が殆どですが、顧客属性としては法人格を有している顧客も存在します。
  • FX会社
    • 日本でFXサービスを個人顧客向けに提供するには、第一種金融商品取引業者として金融庁に登録し、金融先物取引業協会の会員になることが求められています。ここでは、FX専業会社だけでなく、FXサービスを提供する証券会社や銀行も含みます。
  • カバー取引先
    • FX会社が顧客との取引により発生したポジションの調整として行う取引の相手先です(※)。国内外の金融機関(銀行)や、最近ではノンバンク系の企業(ヘッジファンドなど)もカバー取引先として名を連ねていることが多いです。
  • プライムブローカー
    • プライムブローカレッジサービスを提供している金融機関です。プライムブローカーの信用力を使い、FX会社に代わってカバー取引先との間で資金決済を行います。FX会社は、カバー取引先各社に証拠金を差し入れる必要がなく、決済も発生しません。その代わり、FX会社はプライムブローカーに証拠金を差し入れるほか、取引に応じて手数料を支払います。

 

上の図では顧客の売り注文と買い注文をFX会社の中で「マリー(※)取引」としてオフセットしていますが、実はすべてのFX会社がこの「マリー取引」をしているわけではありません。

この辺の違いについては、また別途書きたいと思います。

(※)ここで言う「マリー」という言葉は英語の「結婚」を意味する言葉から取られており、「マリー取引」とは売りと買いのポジションをくっつけて相殺/ネットすることを表しています。相殺して調整できなかった出っ張りのポジションの部分をカバー取引先に出します。

遵守意思表明について

前回、市場参加者がグローバル外為行動規範(略:コード、英文:FX Global Code)を採用するというコミットメントを表明する手段として、外国為替作業部会(FXWG)が「遵守意思表明」テンプレートを用意していることを書きました。

これです↓(出典:東京外国為替市場委員会によるコード和訳)

今回は、この「遵守意思表明」についてさらに掘り下げて考えてみましょう。

 

まず、「遵守意思表明」を利用する目的は何なのでしょうか?

コードに付属されている「グローバル外為行動規範に関する「遵守意思表明」の説明文書」には以下のように書かれていました。

「遵守意思表明」は、外国為替市場の透明性を高め、より円滑にし、機能を強化するという、グローバル外為行動規範の目的を後押しするために作成されました。この目的のため、「遵守意思表明」は、(i)市場参加者がグローバル外為行動規範に示されている適切な慣行を採用し、これを遵守する意思を示すことができ、かつ(ii)市場参加者及びそれ以外の者が、他の市場参加者の業務及びコンプライアンスの基盤をより客観的に評価できる手段を提供しています。

つまり、下記2点が主な目的と言えそうです。

  • 市場参加者がコード遵守の意思を表明の手段
  • 世間一般の人々が遵守意思を表明した市場参加者を把握するための手段

 

ですので、市場参加者は、本表明を自社HPに掲載することにより、本コードに沿ったかたちで外為業務を運営することにコミットしていることを対外的にアピールすることができるわけです。実際、インターネットを調べてみると、すでに結構な数の金融機関が遵守意思表明をしています。(個人向け)FX業者については、海外ではサクソバンクが表明を公表していますが、この記事を書いている時点では、日本において未だ皆無です。

FXWGの狙いはこんな↓感じなんでしょうね。

  1. 市場参加者が組織内で自主的にコードを採用
  2. 「遵守意思表明」をHPなどで対外的に公表
  3. 世間一般の人がそれを見て評価
  4. コードの認知度上昇
  5. さらに多くの市場参加者がコードの採用を検討
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ここで一つ問題が発生します。市場参加者がそれぞれのHPなどに公表するだけですと、どの企業が遵守意思を表明しているかを一般の人たちが把握するのに結構な手間がかかります。いちいち各企業のHPにアクセスして調べないといけないからです。

そこでFXWGは、各国・地域ごとに市場参加者からの遵守意思表明を集約し、HP上で掲示する「Public Register(登録機関)」を設けることを計画しています。日本においては東京外国為替市場委員会が登録機関となり、遵守意思表明をおこなった市場参加者のリストを管理するようです。

なお、東京外国為替市場委員会によると、遵守意思表明の目標タイミングは下記の通り、とのこと。

• 第一陣:東京外為市場委委員が所属する金融機関等・・・2017年末(仮)
• 第二陣:それ以外のセルサイド金融機関・・・2018年前半(仮)
• バイサイド市場参加者・・・期日は定めないが、早期の遵守意思表明を歓迎

 

また、各国・地域毎での遵守意思表明先リスト化に加え、グローバルに市場参加者の遵守意思表明状況の確認を容易にするため、各国・地域における登録機関のリスト化も検討されています。この件に関しては、16か国・地域の外為市場委のグローバ
ルな集まりとしてのグローバル外為市場委員会(Global Foreign Exchange Committee: GFXC)が旗振り役になることが想定されています。

上記をまとめると、こんな↓感じでしょうか。

 

なお、東京外為市場委員会が登録機関の役割を担うに当たり、遵守意思表明の提出方法などの詳細については、追って当委のHPに掲載する予定、とのことです。

また、2017年6月14日に開催された日銀の「グローバル外為行動規範に関する説明会」によると、証券会社への周知活動は業界団体である日本証券業協会を通して実施するとのことですので、FX業者に対しては同じく業界団体である金融先物取引業協会を通して今後実施されることが想定されます。

※本記事を書いているタイミングでは、金融先物取引業協会のHPにはそれらしき情報は見当たりませんでした。

コード遵守に関する取り組み

前回、グローバル外為行動規範(略:コード、英文:FX Global Code)はあくまで「原則」であり、各種準拠法に取って代わるものではないということを書きました。

では、どのようにこの「原則」を全ての市場参加者に遵守してもらうことができるのでしょうか?

本コードを取りまとめてきたBISの外国為替作業部会(FXWG)は、コード公表と同時に「Foreign Exchange Working Group REPORT ON ADHERENCE TO THE GLOBAL CODE May 2017(グローバル外為行動規範の遵守に関する報告書、訳:東京外国為替市場委員会)」という文書も発表しており、そこには本コードが市場参加者に採用されるためのFXWGが考えた計画が記載されています。

報告書の序文には以下のように書かれていました。

コードは、自主的な性格のものであり、効果を発揮するためには外国為替市場の参加者の間で受け入れられ、採用され、遵守される必要がある。そのため、FXWGは、コードの広範な採用・遵守を促進し、そのためのインセンティブを与えることにより、コードをサポートする方法を策定すべく取り組んできた。

コードが自主的な性格という点、そしてFXWGが遵守促進のために積極的に関与するという点、この二つが大切なポイントと言えそうです。

 

まずは1点目、コードの自主性について考えてみましょう。

この点について、日銀と東京外国為替市場委員会は以下のようにまとめています。

  • コードは法律・規制ではないため、幅広い市場参加者による自主的な遵守が重要。
  • 基本的なアプローチ:「比例原則」「市場参加者が自己の活動をコードに適合させるためにとる方策は、各市場参加者の外為業務の規模や複雑さ、また外為市場への関与の性質を反映したものであるべき」。
  • 遵守に当たり、どのような方策をどのような方法でとるべきかは、各市場参加者の自主的な判断に委ねられる。
  • 規範の定め方についても、市場参加者の自主性を重視。詳細なルールではなく、ある程度解釈に幅のある「原則(principle)」を定めることで、市場参加者自身が外為業務の態様に応じて行為の適切性を自ら判断。→ 「書かれていないことは守らなくてよい」といった機械的対応に釘を刺す。

 

自主性というと甘い感じがするのですが、逆に外堀をしっかり埋められているような気がしますね・・・。言い逃れができない、的な。

 

では、2点目のFXWGの関与についてはどうでしょう?

報告書によると市場参加者のコード遵守のための重要な要素として次の3つの点を挙げており、それぞれの点について促進のための計画を記載しています。

  • コードの実務への組み込み(Embedding)
  • モニタリング(Monitoring)
  • 遵守の表明(Demonstrating)

 

ここでは簡単に3つ目の「遵守の表明」について簡単に触れたいと思います。

FXWGでは、市場参加者が本コードを遵守していくことを対外的に表明することが重要だと考えているそうです。とういのも、遵守意思を対外的に表明する市場参加者が増えることによって、本コードの認知度が上がり、さらに遵守表明をする市場参加者が増えていくことが期待されるからです。

そのためFXWGは、市場参加者が本コードを遵守していく意思を対外的に表明するための共通のフォーマットとして「遵守意思表明(Statement of Commitment)」を準備しました。

(出典:東京外国為替市場委員会によるコード和訳)

 

今後はこの遵守意思表明をしているかどうかが、FX業者を選ぶ一つの大きな指針になりそうですね。